新型コロナウイルス 〜隔離の意義を考える〜

Ph.Dコラム

最近は中国の武漢で発生したと推測される新型コロナウイルスの感染拡大が連日のように報じられています。おそらく実体は専門家でも把握しきれていないと思いますが、「考える題材」として扱ってみたいと思います。

*私は医学の専門家ではないのですが、専門外の立場から考察したいと思います。

 

昨年の12月以降に発生した新型コロナウイルスは、12月末までに「原因不明の肺炎」として中国の公文書に記載されていたようです。1月7日に原因が新型のコロナウイルスと特定されたようで、1/23日に武漢からの移動が封鎖されました。日本は1/28日からチャーター機を派遣して、約600名の避難を開始しました。

 

新型コロナウイルスは、

「基礎疾患のある高齢者は非常に高いリスク」

「感染しても症状が出ない人も多い」

症状が出ていなくても感染力があるらしい

という特徴があるように思います。

致死率は現時点で3%ほどだと言われています。

 

最初にチャーター機で帰国させた600人の隔離の意義について考えてみたいと思います。

報道を見る限り、おそらく多くの人が期待しているのは「水際対策」という意義です。

感覚的には、非常に判りやすいですね。

ところで訪日する中国人は、2019年12月の1ヶ月間で71万人でした(日本政府観光局)。

武漢市の人口は約1000万人、中国の全人口は13,86億人(2017年)とされているので、単純に考えると5000人くらいの武漢の人が12月に日本を訪れた計算になります。

1月も同程度だと考えると、1万人くらいと推計されます。

映像を見る限り武漢はかなり裕福に見えますので、実際はもっと多いかもしれません。

(新型コロナウイルスの脅威が認識される前に訪日した人々を非難する理由は皆無です)

これを踏まえた上で、600人を隔離することに意味はあったのでしょうか??

訪日客のどれくらいが感染していたのか不明ですが、実際に発病した人や、そこから広がったと思われるケースが出始めています。

伝染力はかなり強そうなので、おそらく二次感染して日本に静かに広まっている可能性は高い。

日本政府も、武漢市のある湖北省からの入国を2/1にやっと禁止しましたが、日本でも水面下で広がっている可能性を考えると、このような処置が無駄であると考えていたかもしれません。

(もちろん政府は上の「推計」ではなく、パスポートの情報から正確な入国者数を把握していると思われる)

 

 

中国の対応も遅いと非難されていますが、現実的に考えると難しいです。

今から見たら12月の初期の段階で武漢を封鎖するべきだったと感じるかもしれませんが、深刻さが判らない時に東京都と同じ人口の都市の封鎖を求めるのは無理があります。

1月初旬に脅威が認識され始めて、地方と中央政府で協議して、その頃には武漢から帰省やビジネスで相当数が既に流出していることも予想される状況で、それでも封鎖したことを考えると1/23日は早いように思えます。

ちなみに日本では、今日の時点で愛知、和歌山、千葉、東京などで感染確認されていますが封鎖されていません。

「都市封鎖」という手段の深刻度を考えると、中国だからこそ(?)可能な手段であって、日本ではたぶん不可能でしょう。

水際対策というのは手段の一つですが、短期間で膨大な人が国際的に移動する現代では、そこまで信頼できるはずがありません。

 

 

一方で帰国者全員のウイルス検査を行ったことは、非常に有意義だったと思われます。

普通に考えて病院に行くのは「発病した人」です。

新型コロナウイルスは「発病しないが感染力がある人」が存在する可能性が高いですが、このような人は病院に来ないので把握できない。

今回は600人という規模ですが、武漢に在住していた人がどれくらいの割合で感染しており、そのうち何%が発病して、さらに何%が重症化するというデータが得られます。

水際対策に決定的な効果が望めない以上は、現在や少し前の武漢が近い将来の日本を反映している可能性があるので、このデータは非常に重要でしょう。

経過観察と組み合わせれば、今後の感染が広まる速度や、それに併せて薬をどれくらい準備するかという予測にも使えます。

(薬などは、必要になった時に魔法のようにどこかから出現するわけでは無い。増産にはコストもかかりますし、他の薬の生産にも影響が出るかもしれない。精度の高い予測は重要です)

 

不便な隔離生活を強いられた人々や、検査にかかわった人達の苦労は、このような形で活かされるでしょう。

 

 

伝染力を考えると、新型コロナウイルスはやがて世界中に広まるような気がするかもしれません。実際のところは判りませんが、インフルエンザウイルスのように「季節性」であれば、気温が上がって湿度が上昇する春に終息するかもしれません (今年の暖冬は不幸中の幸いかも?)。楽観は禁物ですが、悲観し過ぎるほどの情報も無いので、冷静に科学的なデータを待つべきかと思います。

 

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