植物の敵と味方 〜序〜 2

植物の敵と味方

そもそも植物はどのように病原菌を排除しているのでしょうか? 植物というと病気に弱いイメージをお持ちの方が多いと思いますが、実は病気を起こせる微生物というのは相当なエリートです。ある植物に対しては病気を起こせる微生物も、違う種や品種には感染できないことが多いです。

植物の防御メカニズムは、常に展開されている「静的抵抗性」と、微生物に反応して誘導される「動的抵抗性」に大別されます。静的抵抗性は細胞壁などの物理防御や、常に含まれているカテキンやポリフェノールなどの化学物質です。「動的抵抗性」の方は二段階あって、微生物の成分を感知すると1段階目の反応として、新たな抗菌物質や活性酸素の生成、細胞壁の強化などの反応が誘導されます。この1段階目は「基礎的な防御応答(自然免疫とも言う)」なのですが、誘導が間に合えば凶悪な病原菌の感染も充分食い止めることができます。

 

動的な基礎的防御応答は病原菌にとって非常に厄介らしく、病原菌の多くは接触前にエフェクタータンパク質というものを使って発動を止めようとします。これが上手くいけば、植物の備えている微生物センサーや警報を伝えたり攻撃したりするシステムがダウンします。

 

植物にとっても基礎的防御応答は非常に重要で、これが突破される事態は最悪です。エフェクターによる攻撃が完璧で気が付かない場合はやられてしまいますが、気が付いた場合は二段階目の・・・・というか、最終段階である「過敏感細胞死」を発動させます。これは植物細胞が自爆して相手を滅ぼします。

 

死んでしまうなら抵抗性の意味も無いように感じられますが、まだ感染していない他の組織が守られるので、個体レベルで考えると非常に有効です。

 

病気を引き起こせる「成功した病原菌」になるためには、過敏感細胞死を起こさせずに基礎的防御応答を抑制することが大切です。つまり基礎的防御応答を適切に発動させることが、植物の防御機構の要(かなめ)であるということになります。

 

植物の敵と味方 〜序〜 3

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