学会提言 ~ファンを増やす意識改革を!!~

アメリカのメジャーリーグ関係者で、「野球は社会の役に立ちますか?」と聞かれて、「役に立たない」などと答える人は居ないでしょう。「人々を勇気づける」「多くの人に夢を与える」など、プロとして大金を稼ぐような選手だけではなく、マイナーリーガーでさえも意義をしっかり答えると思います。これはもちろん本心から野球を大切にしているから・・・という部分もあるでしょうが、業界全体が衰退してしまえば、自分のチャンスも少なくなるという理由もあるでしょう。いずれにせよトッププレイヤーから末端まで、「野球は役に立たない娯楽だ」と答えない意識は徹底されているように思います。

一方で研究業界はどうでしょうか??
基礎研究の分野では、社会から「目に見えるような役に立つ成果」ばかりを求められることに対して懸念の声があります。しかし著名な研究者がいまだにメディアからのインタビューに「研究は役に立たないからいいんだ!」などと答えている光景を見ると、そのような雰囲気を作ってきたのは研究業界自身であるとも言えるかもしれません。「役に立たないからいいんだ!」という言葉は、おそらく長年研究に従事してきた仲間には、本当に役に立たないとは思ってないことが伝わるでしょう。しかし研究経験の無いインタビューアーや多くの一般の人々に判るはずがありません。

また職業研究者はもちろんですが、所属している研究室の学生さん達にも本気で研究に意義があると思えるような教育をされていますか? 当然ながら教授や准教授の数よりも、大学生や大学院生の数の方が多いです。さらに、その教え子の学生たちに「何の研究をしているの?」「その研究って何かの役に立つの?」という質問をする家族や親戚・友人の数まで考えると、研究の意義を一般の人にも判りやすく語る教育は必須であると言えます。

この問題についてNPO法人「名称未定・・・」は二つの提言をさせていただきます。

一つは基礎研究であっても、多くの人を納得させるような意義を見つけることです。
上の例で「研究は役に立たないから良い」という回答は、なんとなく重要だというのは判っているけど、具体的に何が重要なのか言葉にできない状態を反映していると思われます。しかし、曖昧なことの核心を見つけて論理的に他人に伝えることは、研究者としてもっとも根源的な姿勢のはずです。各人が自分の研究について、専門知識の無い人でも判りやすく、しかも他の専門家から見ても論理的に筋の通った意見を備えておくことを提言します 。
(本質的な重要性ではなく表面的な判りやすさや面白さを優先すると、結局は聞いた側に残りません)

二つ目は、研究・探究することのファンを増やす意識を持つことです。
現在は大学や研究機関・企業で研究成果をアピールする活動が精力的に行われています。これは非常に重要ですが、一方で成果をアピールするということは、成果が無ければ意味が無いということになりかねません。
野球などのスポーツは、プロを目指す人だけではなく、娯楽として気軽にスポーツを楽しむ人によっても支えられています。研究も研究成果だけではなく、一般の人が気軽に研究・探求を楽しむようになれば、プロ研究者の魅力を理解して応援してもらえる雰囲気も醸成できるでしょう。そのためには一般の人々に対する接し方はもちろんですが、最先端設備などが無くても手軽に面白さを味わえるような探究プログラムの開発なども重要です。

 

なおNPO法人「名称未定」は、この二つの点に関して一般に普及することを目的に活動しています。
ご賛同いただけるようであれば、ご協力・ご支援などよろしくお願いいたします。

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