植物の敵と味方 〜転〜 1

植物の敵と味方

シロイヌナズナは研究が圧倒的に進んでいる植物で、ここで発見された知見が多くの植物でも利用されます。シロイヌナズナの知見は、植物全体を代表するという考え方が当時は主流でした(今でもその傾向は強いと思いますし、実際に他の植物研究に対する貢献度は凄まじい)。当然ながら私も、AtCERK1は非マメ科植物の代表として考えていました。したがってYAQを持たない祖先CERK1遺伝子が、YAQを獲得したことが、マメ科植物が根粒菌共生能力を獲得したビッグイベントだと・・・。

しかし論文を投稿してからシロイヌナズナ以外の非マメ科植物のCERK1を調べてみると、意外なことに気が付きました。

CERK1は多くの非マメ科植物ではゲノムに1コピーしか存在しないので、簡単に見つかります。その多くがYAQや、類似したYARの配列を持っていました。一方でシロイヌナズナと同じアブラナ科の白菜やブロッコリーのCERK1は、YAQやYARを持っていません。

最初は私の論文の結論が間違っているのかと青ざめましたが・・・・

今までの実験と同じようにミヤコグサのnfr1変異体に、細胞外をNFR1に換えて導入してやると、YAQやYARを持つ非マメ科植物のCERK1は相補します(注:これらの非マメ科CERK1は、細胞内ドメインの配列を全く改変していません)。一方でYAQ/YARを持たないアブラナ科のCERK1は、やっぱり相補しません。YAQ/YAR配列が重要という結論は大丈夫なようです。

 

アブラナ科以外の非マメ科のCERK1がYAQ/YARを持っていることに気が付いた時、青ざめると同時に実は「この話はとんでもなく凄いことになるかも知れない」とも感じていました。おそらく植物の共生研究者であれば、“共生に関係していてアブラナ科は例外”という現象に誰もが心当たりがあるからです。それはアーバスキュラー菌根菌と植物の共生です。

植物の敵と味方 〜転〜 2

 

コメント