セダム 前編

生徒達の研究

Sedum

「セダムの葉は離層様の構造によって積極的に独立しようとしている」

山崎のどかさん、織田稔梨さん

第81回大会日本植物学会高校生研究ポスター発表会 最優秀賞

第59回日本植物生理学会年会高校生生物研究発表会 優秀賞

 

この研究は、法政女子高等学校(現・法政国際高校)の山﨑のどかさんによって始められました。以前から交流があった法女の先生から5月頃に、「3年生で生物の選択をしていない子で、進学のためもあって研究をさせたいのだけど面倒を見てくれないか?」と依頼されました。正直なところ、最初は微妙な気持ちでしたが・・・。ところが実際に一緒に研究してみると、山﨑さんは非常に一生懸命に取り組む人で、自分でも考えて工夫しながら短期間で驚くような発見をしました。

私の「何でも良いから面白そうに感じる植物を持って来なさい」というアドバイスで、山﨑さんが選んだのがセダムです。最初は「金のなる木」に注目しましたが、何軒も園芸を扱っている店を回っている時に、セダムの葉が異様に取れやすいことに気が付きました。しかも取れた葉は、その後で根が生えてきて新しい個体に成長します。

また面白いことに、茎の方からも根が出てくることがあります。

 

山﨑さんはこれらの形質に興味を持って、とりあえず「葉が異様に取れやすい」という形質から調べることにしました。

茎から葉が取れやすいということは、葉と茎の間に何か特殊な工夫があるのかもしれません。そこで山﨑さんは下図のような切片を作って観察しました。面白いことに葉と茎の境界の維管束周辺に葉緑体が濃い細胞が密集しているようです。そして境界が明確に見えるので、どうやら離層らしき構造が存在するようです。

ここで山﨑さんは、もう一つの面白い事実に気が付きました。この「離層」の構造が、葉を茎から切り離した後では変形して、お互いにピッタリとした形にならなくなるのです。

上の写真で本来は黄色の点線でピッタリとくっついていたハズなんですが、切り離すと境界面が大きく変形してしまいます。これは一瞬で起きるので、おそらくはくっついている時から茎と葉は、お互いに押し合うような大きな力がかかっていると推測されます。これがセダムの葉が取れやすい理由でしょう。つまりセダムは、積極的に葉を落とす戦略を持っているのです!!

山﨑さんのスケッチ

 

落ちた葉は根を出して新しい個体に成長しますが、「普通の植物」の葉は、落ちると枯れてしまいます。セダムの葉が枯れないのは、何か工夫があるのかもしれません。これに関して山﨑さんは、実験のために丁寧に葉を採取しようとしている時に気が付きました・・・。

葉を丁寧にカミソリで切り取った場合には、葉が枯れてしまうのです。逆に手で取った葉は枯れません。

 

手で切り取った場合の断面を観察すると、維管束の周辺にカサブタのようなものが形成されるのが判ります。

動物の場合も傷口にカサブタが出来て血の流出を止めます。カミソリで切った場合は萎んでしまうことから、山﨑さんはカサブタが水分の流出を止める役割をしていると予想しました。

これを検証するために山﨑さんは、カミソリで切ったセダムの断面にワセリンを塗って、水の流出を止めた場合にどうなるかを確かめる実験を行いました。私は個人的には、葉の表面には気孔などもあるはずなので、「そんな上手く行かないだろうけど」と思っていましたが・・・・

なんと期待通り(私は予想外)に、ワセリンを塗った方は枯れませんでした!!

じゃあ「普通の植物」の葉が枯れるのは、傷口からの水分の流出が原因なのか???

高校の実験室で他の子が育てていたキャベツの葉を拝借して実験したところ・・・

見事に傷口にワセリンを塗った場合には枯れる時間を大幅に遅らせることができました!!!

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