土壌細菌である根粒菌は、マメ科植物の根の根毛から感染して、根の維管束近くの皮層細胞に導かれます。
根粒菌が根毛の先端に付着すると、根毛は変形(カーリング)します。カーリングした内側では、根粒菌が増殖を始めて、しばらくすると根毛の細胞の細胞膜が陥入し始めて通路ができます。個々の根粒菌はそれほど長くない棒状の単細胞ですが、増殖しながら通路を移動するので菌糸のように見えます (感染糸と呼ばれるが、実体は無数の根粒菌)。
植物の根毛は単細胞で、通路は細胞の中を通りますが、細胞膜は陥入しているだけで破れていません。つまり「細胞外」を保ったままで根毛細胞の中を通っています(ややこしいですが・・・)。
面白いことに感染糸ができた根毛細胞の下の細胞は、同じように根粒菌の通り道を作って待っています。その結果として「細胞外」を維持しながらも、根粒菌は次々と植物の細胞の中を通過して維管束近くまで導かれます。
維管束近くの皮層細胞(植物種によっては内鞘細胞)は根毛で根粒菌が迎え入れられ始めた時点で分裂を開始しています。そこに導かれた根粒菌は、皮層細胞の内部に取り込まれて細胞内共生を行います。この段階も、皮層細胞の細胞膜が陥入するエンドサイトーシスに類似した仕組みで取り込まれるので、根粒菌は植物由来の膜(シンビオソーム膜)に包まれて細胞質とは隔てられたまま細胞内を浮遊しています。
根粒菌が取り込まれる頃には、感染が生じた部分が瘤状になっています。まさに根の粒なので根粒と呼ばれています。ただし、根に粒状のモノが形成される要因は他にも色々とあるので、粒があれば根粒とは限らないことに注意してください。
皮層細胞に取り込まれる前までの根粒菌は、基本的に土壌中で単独で生育している時とあまり変わりません。しかし植物細胞内に取り込まれるとバクテロイドと呼ばれる特殊な形に移行して、大気中の窒素をアンモニアに変換する能力を発動します。
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