大学院研究(2) 根粒で高発現する遺伝子

大学院で師事していた先生は、ダイズ(Glycine max)の根粒で高発現するPEPCであるGmPEPC7と、全ての組織で非常に弱く発現するGmPEPC15を同定していました。後者のタイプはマメ科以外でも見つかりますが、他の植物には根粒が無いので、GmPEPC7は根粒を作るマメ科植物で新たに獲得されたと推測されます。ダイズのゲノムには他にもPEPCがあるのですが、その中でGmPEPC15のタンパク質をコードするDNA配列は、GmPEPC7と異常なくらい類似しています。アミノ酸配列も99%同じなので、性能もほとんど同じでしょう。違うのはGmPEPC7が根粒で高発現する点のみだと思われます。師事していた先生は私に、どのようにしてGmPEPC7が獲得されたのかを調べる研究テーマを与えました。

研究テーマを自分で決められなかった・・・
大学院の研究テーマは、私の場合は師事している先生が決めました。自由に決めても良いと言われたとしても、当時の私に研究テーマを自分で考える能力はありません。他の大学院生の大部分も同じです。多くの中学・高校生がテーマに悩むのは当然かと思います

ところで1つの生物のゲノムは、基本的に全ての細胞で同じです。人間の場合でも、心臓や皮膚、脳などの細胞の持つゲノムは同じですが、当然ながら細胞の機能や形態は全く異なります。この理由は・・・ゲノムに書かれている全てのタンパク質が、常に作製されている訳では無いからなのですね。タンパク質の設計図は共通で持っているけれど、それを作るか作らないかは細胞の種類や環境によって異なるのです。

このようなタンパク質を作るタイミングを決める段階はいくつか考えられるのですが、最初に設計図をコピーしてRNAを作る段階の情報は、ゲノム上のプロモーターというDNA配列に書かれています。多くの場合は、そのタンパク質のアミノ酸配列を書かれている部分(ORFまたはCDSと呼ばれることが多い)の上流(DNAの並びには向きがある)にあります。

 

つまりGmPEPC7とGmPEPC15の違いは、プロモーター領域の違いであると推測されるのですね。通常はアミノ酸配列が似ている遺伝子でも、ORF以外は相同性がガクッと下がるのですが、なんとGmPEPC7とGmPEPC15はプロモーター領域の配列も非常に類似していました。このどこかにGmPEPC7を根粒で高発現させる配列が存在すると期待されます。

 

大学院研究(3) ダイズ根粒でプロモーター解析

 

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