エジプト訪問記〜9〜end

旅行記

ピラミッド観光の後は、行きと同じように中国経由で日本に帰り着きました。初のエジプトどころか、初アフリカ、初イスラムだったので、色々なものに驚かされましたし、考えさせられました。

 

1. 賄賂(わいろ)という概念

日本以外の国だと普通だという話はよく聞きます。エジプトではあちこちで賄賂などを要求されました。例えばピラミッドでスフィンクスの周りは腰の高さほどの石垣があって、近づくことができません。そこに立っていた警官(拳銃を持っている)が話しかけてきて、「ここを越えてもいいよ〜」「ここから写真を撮るといいよ〜」みたいなことを言ってきます。で、スマホをかざすと「マネー、マネー」とお金を要求してくる。相手がホンモノの警官で、しかも武装しているのでシャレになりません。幸いにしてJSPSの秘書さんが慣れているので、平然と追っ払っていましたが。

またエジプトを出国する時も、荷物検査の長い列に並んでいると係員が寄ってきて、なぜか特別待遇で空いているゲートに通されました。「観光客だから・・・?」とか思っていると、「20ドル or 20ユーロ」とか言ってきます。しつこいので2ユーロだけ渡すと、ブツブツ言いながら離れていきましたが・・・。結果的には意図せずに利用してしまったのですが、まあ便利なのは確かです。欧米のチップって、賄賂をもうちょっとフォーマルにしたものだろうか?とか考察していました。

 

2. 詐欺師

学会が開催されたハルガダの、その中でも隔離されたリゾート地であるEl-Gouna地区は、働いているエジプト人達に余裕がありました。町中を歩いていてもみんな親切ですし、盗難や詐欺の脅威を感じません。しかしルクソールやカイロは全く異なっており、全然信用できない感じでした。ピラミッドの周りにはラクダに乗せてくれる人が沢山居るのですが、うっかり乗ってしまうと、とんでもないところに連れて行かれて大金を巻き上げられると言う話は非常に有名です。

正直なところラクダはかなり魅力的なので、詐欺の恐れが無ければ普通に乗せて貰ってお金を払います。しかしラクダの詐欺はとても有名なので、乗る人はほとんど居ません。結果的には損していると思います。

妥当な値段でラクダに安心して乗れるならば、たぶんラクダ観光業者はかなり流行るでしょう。ボッタくれば、一時的には大もうけができますが、詐欺の評判が広まって客が減ってしまいます。客が減れば正規の安い値段では暮らしていけないので、ますますボッタくりが増えてしまいます(←たぶん今はココ)。このような悪循環は「共有地の悲劇」という経済学の有名な法則の通りですね。

「共有地の悲劇」では、共有地を独占管理させることで悲劇が回避できることが示唆されています。つまりラクダ観光業者を1社にすれば、悪質なサービスを排除して長期的に安定な「妥当な価格のサービス」が可能になるかもしれません。

ちなみに詐欺師も賄賂を要求する人もお土産物屋の人々も、求めるのはドルやユーロで、「エジプトポンド」を喜んで受け取ってくれたのはEl-Gounaの中や空港の飲食店くらいです。それらの場所も、基本的にユーロは受け付けます。たぶんエジプトポンドは要らないんじゃ・・・????

 

3. なぜエジプトは観光業を大切にする?

中東というと「産油国」というイメージが強いです。しかし以前からエジプトは、テロが観光を標的にして政権のダメージを狙うくらい観光をメインにしています。学会でのルクソールツアーでも、砂漠地帯では要所要所で重装備の警官(?)が検問をしていますし、どうやらバスも警察に護衛されていたようです。バスが帰りに集落の中の土産物屋に立ち寄ったのですが、戻る時に入り口に覆面をして自動小銃を持った人が居て死ぬほどビビりました。しかしこれは警察の護衛だったらしい。つまり30人ほどの観光客を守るために、わざわざ特別に警備してくれるのです。しかも上記リンクのルクソール事件では、観光客が減ってしまうテロに激怒した住民に、犯人が追いつめられたそうです。

私がシンポジウムで発表した「植物と微生物の共生研究」でも、良い関係を築くためには「信賞必罰」が大事だという結果が出ています。あちこちで見られる現象ですが、観光客としても良い品やサービスに対しては、しっかりと対価を払ってあげることが重要だと思います。また、詐欺や悪いサービスには「ラー(Noの意味)」と言うのも大事ですね。

帰国してから調べてみると、リンクのような記事が見つかりました。どうやら石油は出るみたいですが、自国で消費して輸入には回らないようですね。

 

4. 貧困

ルクソールには、地図や安っぽいお土産物を買わせようとする子供が沢山居ました。たぶん10才にもならない子達なのですが、もちろん観光客もほとんど相手にしないので荒んでいます。私が船着き場の植物の写真を撮ると、まとわりついていた子供が「俺を撮っただろう! 1ユーロ寄越せ!!」と繰り返し叫んでいました・・・。

教育を受けられる機会も無く、有意義な技術や知識を学ぶこともできない状況には心が痛みます。しかし買ってあげたところで、下手をすると年長の子供か大人にぶん殴られて取り上げられたりする予感しかしません。

たぶん親も追いつめられすぎているのでしょう。子供に小銭をあげたところで解決する問題ではないですが、大人にまともな職を与えることが重要なんだろうな・・・とか考えてしまいました。

日本の中学・高校でSDGsという社会問題の解決法を考えるコンテストがあって、「子供の貧困」も課題の一つです。しかしリアルでシリアスな本物の「貧困」に対して、「日本の中高生が想像できる貧困」は相当なギャップがあると感じます・・・。

 

5. イスラム

エジプトには「コプト」というキリスト教の一派が1割ほど居ますが、9割はイスラム教徒です。お世話になったエジプト人の運転手さんも秘書さんもイスラム教徒でした。非常にお世話になったので何かお礼がしたかったのですが、何か好きなものは無いのかと運転手さんに尋ねたところ、「イスラム教は“喜ぶ”ことはダメ」と言われて絶句しました。まあその割には親切でよく笑う人が多かったですし、秘書さんも「子供と夫が私に隠れてこっそり犬を飼っていて驚いた」という話を楽しそうにしていました。

運転手さんも日本語で短く説明してくれただけですし、ホンネとタテマエみたいな要素もあるでしょうが・・・。

 

6. やっぱりアフリカは面白い!!

まあ色々とありましたが、出会ったエジプトの人々は親切で明るい人が多かったです。カイロ大学には日本に留学していた人も多いみたいで、懐かしそうに話しかけられることが多かった。「ナイル川沿いだけ緑で他は全部砂漠」という自然環境にも凄く衝撃を受けました。教え子達が見つけてくる「面白い植物」の大半もアフリカ産ですし、それらが自生している環境を味わってみたい。また機会を見つけて、エジプトやアフリカには行ってみたいと思います。

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