セダム 後編

生徒達の研究

山﨑さんはセダムの葉と茎の間に、離層様の構造があることを見つけました。また葉が茎に接続している時から、葉と茎はお互いに押し合って脱離しようとする力が働いているらしいことも発見しました。脱離した葉は枯れずに長期間耐えて、そのうちに根と芽を出して新たな個体に成長します。山﨑さんの研究から、葉が枯れないのは維管束の周辺に「カサブタ」が形成されて、水分の流出を止めることが理由だと推測されます。

カサブタが出来る維管束の周辺には、葉緑体が濃いように見える部分があるのですが、学会発表で専門家から「小さな細胞が集まってるだけで、特に葉緑体が濃いという訳では無いのでは?」という指摘がありました。そこで山﨑さんは、クロロフィルの自家蛍光を観察することで検証しました。上の図の右下のように、UVを当てると接続部の維管束周辺が赤い蛍光を発しますので、葉緑体がこの部位で発達していること自体は正しいようです。ただ、これが水分の流出を防ぐことと関係しているかどうかは判らないままですが・・・・。

ちなみにカサブタは、茎側にも生じるようです(下図)。葉が取れた直後は葉緑体のクロロフィルに由来すると思われる赤い蛍光が観察されるのですが、カサブタができた頃には青白いに変化します。たぶんポリフェノールという物質ではないかと私は推測していますが・・・。

ちなみに傷口が青白い物質で覆われるのは、セダムだけではないようです。キャベツでも同じようになっていました。

 

 

この辺りで山﨑さんは受験で研究が続けられなくなったのですが、ちょうど別のテーマで少し行き詰まっていたサイエンスフロンティア高校の織田稔梨さんが引き継いでくれました。織田さんは最初、「山﨑さんの研究のつづき」をやっていたのですが・・・

そのうちに織田さん独自の視点で研究を始めました。織田さんが気になったのは、下図のような光景です。

落ちた葉から緑色の細胞塊(カルス?)に見えるような組織が形成される場合と、根が形成される場合があるようなのです。しっかりと調べてみると、どうやら葉の裏表が関係しているらしいことがわかりました。

落ちた葉の向きによって、セダムは根を優先するかカルス状の組織を優先するか決まっているようなのです。ところで、そもそもこのカルス状の組織は何でしょうか?

織田さんが切って観察してみると、茎のようなものが見えます。また暗所で育てると茎が伸びるので、どうやらセダム特有の丸い葉がカルスに見えていただけで、「芽」であることが判りました。カルスが形成されてから暗所に移すと、下の写真のように茎が徒長するのが判ります。

つまり葉が落ちた時の向きによって、葉の表面が上の時は芽を優先して、裏面が上の時は根が優先されるようです。それでは、葉はどうやって自分の向きを判断しているのでしょうか?

織田さんは重力と光の可能性を考えて、それを検証するために下側から光を当てる実験をしました。

その結果、根は光と反対の方向に伸びる性質があることが判明しました。また、葉の表側に光が当たった時には逆向きでも芽が優先されるようにも見えたのですが・・・・これは再現性が悪くて自信が持てないようです。

 

ちなみに光が当たらない時はどうでしょうか?

暗所で長期間置いておくと、葉は緑なままだったり黄色くなって元気がなくなったりするのですが、どちらにせよ芽も根も全く形成されません。

おそらく悪い環境では、なんらかの偶然で状況が好転するまで、何もせずに節約するようです。

 

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