高校生研究発表会についての蛇足

Ph.Dコラム
蛇足1
「最先端技術や機器を使用しただけの、専門家であれば凡庸なレベルの研究は除く」について

この数年で特に顕著になってきましたが、SSHや大学と連携している中学・高校の中には、普通の学校では使うことができないような最先端機器・技術を用いた研究が出てきました。

SSHという制度から考えても「公平性」を議論することは無意味だと思いますし、私自身は特に問題であるとは思いません。

ただし、それは技術や機器に見合うようなアイデアや工夫が見られた場合だけです。

私が問題だと思うのは機器や技術が高校生としては凄いだけで、

研究内容自体は退屈で凡庸なレベルの発表

が多いことです。

専門家の発表でも、特に鋭いアイデアや着眼点・工夫・独創性などが感じられない退屈な発表はありますが、同じようなものを見せられて喜ぶプロの研究者は少ないでしょう。

(専門家を喜ばすためにやっているのではないのはわかっています)

もちろん技術や機器が最先端のモノであれば、「新規性」を出すのは難しくありません。

しかし中学・高校で普通に使っているような機器・技術を使って、

工夫しながら小さくても新しい発見をした研究や、面白くて可能性の感じられる挑戦をして、結果として成果が出なかった研究をした生徒

の方が圧倒的に将来性が高いですし、研究としても私は評価します。

革新的な発見や発明を行うのは、「最先端機器」を使う人ではなく

「独創的なアイデアや工夫」が出せる人

だと思います。

審査に関わる人達には、この点を意識していただけると個人的には嬉しいです。

 

蛇足2
「大学の下請け」

上述の話と関連していますが、最近は大学の先生の下請けのような発表も増えてきました。

高大連携の成果なのか弊害なのか判りませんが、アイデアが借り物で虎の威を借るような研究を、他に学ぶべきことを犠牲にしてまで高校でやる意味があるのでしょうか?

大学の教員の忙しさと余裕の無さは充分に理解していますが、せっかく中学・高校生の研究教育に関わって下さるならば、その子達のアイデアや独創性を育てる方向にしていただきたいです。

 
蛇足3
「でもXX大学の先生がこう言ったから・・・」

私が審査員をする場合、おそらくE判定をすることは無いでしょう。現状がどんなに酷くても、その子が成長した将来に期待したいですし、心を折るようなことをしたくありません。

しかし矛盾を指摘した時に、論理的に説明したり自分で考えて反論するのではなく「でもXX大学(有名大学)の教授が言ったから・・・」という主張をする発表者には、E判定を差し上げたくなります(ときどき出会います)。

それは宗教であって、科学ではありません!!

科学というのは肩書きや地位ではなく、論理的に正しいかどうかが重要なのです。

まさに「科学の基本姿勢を学び直してほしい」です。

 

聞いた話ですが、ある学会の高校生発表会で審査員や運営に引率する高校の先生からクレームが来たそうです。

その先生曰わく、

「私達はXX大学(最高学府)の教授に指導してもらっている。研究は完璧なはずなので、私達が想定していない質問をするのは止めてくれ!!」

・・・・終わってますね。

その高校の先生がダメなのか、指導している教授の能力が無いのか判りませんが、少なくともそのエライ教授の顔は泥だらけです。

実際にどのように指導されているのか判りませんが、理科教育としては公害レベルの酷い結果になっています。

 

科学においては、論理的に正しいかどうかが重要であって、肩書きや地位は関係ありません。

論理的に正しければ、

高校生>>教授

というのも充分にあり得ます。

おそらくその教授は立派な方で、生徒や先生に説明が上手く伝わっていないと信じたいですが・・・。

 

中学・高校の生徒さんや先生方に申し上げたいのですが、大学の先生は「中学生や高校生が何を知っているべきか?」ということを把握していない人が多いです。

知っているつもりで説明しているのだけど、質問されたら「ああ、たしかに解説しなければ判るわけ無いな」と思うこともよくあります。

質問するよりも、判らないまま流される方が失礼ですので、恐れずに納得できるまで付き合ってもらって下さい。

(それで怒り出す先生だった場合、違う先生に協力を頼みましょう。その人は研究者としては立派かもしれませんが、教育には向いてないです)

 

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