中川知己

植物の敵と味方

植物の敵と味方 〜起〜2

Nodファクター受容体であるNFR1は、キチンを受容して防御応答を発動させるCERK1と非常によく似ています。その上で私の研究により、NFR1には防御応答を起動する能力があることが判明しました。 NFR1もCERK1も、細胞外でそれぞれNo...
植物の敵と味方

植物の敵と味方 〜承〜

NFR1とAtCERK1のキナーゼは、アミノ酸配列が類似していますが、NFR1だけに共生応答を起動する能力がありました。 ということは、NFR1の共生能力はAtCERK1とのわずかな違いで決まっているはずです。そこでNFR1の配列を部分的に...
生徒達の研究

キンシャチ(サボテン)

Echinocactus grusonii サボテンの水吸収の工夫 横屋稜さん 第81回日本植物学会高校生発表 優秀賞 サボテンのトゲは、葉の変形物だというのは有名な話です。サボテンを見ながら横屋さんと話している時に、それではサボテンのトゲ...
植物の敵と味方

植物の敵と味方 〜転〜 1

シロイヌナズナは研究が圧倒的に進んでいる植物で、ここで発見された知見が多くの植物でも利用されます。シロイヌナズナの知見は、植物全体を代表するという考え方が当時は主流でした(今でもその傾向は強いと思いますし、実際に他の植物研究に対する貢献度は...
植物の敵と味方

植物の敵と味方 〜転〜 2

アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は糸状菌(カビ)で、菌糸の一端は根に感染して、植物細胞の中に樹枝状体という構造を作ります。菌糸の大部分は根の外側の土壌中に広がっており、土壌中からリン酸などの無機養分を集めて、それを樹枝状体で植物に渡して、そ...
植物の敵と味方

植物の敵と味方 〜転〜 3

CERK1がAM菌共生に関わっている可能性が浮かび上がって来ました。これを確認するためには、CERK1が壊れた植物でAM菌共生を調べるのが王道です。シロイヌナズナではCERK1が壊れた変異体を渋谷先生達が単離していたのですが、残念ながらナズ...
植物の敵と味方

植物の敵と味方 〜結〜

植物の基礎的防御応答を制御することが知られているOsCERK1が、正反対の共生菌を受け入れる機能も担っていることを私達は明確に証明しました。類似した報告は、少なくとも植物業界では全く存在しません。しかもイネ以外の多くの植物でも同様の仕組みに...
植物の敵と味方

植物の敵と味方 〜その後〜

2014年の私達のOsCERK1の論文が出てすぐに、イタリアのMycファクターの存在を2007年に示したグループから接触がありました。彼らは2013年にAM菌の共生シグナルはNodファクターにそっくりなMyc-LCOと呼ばれる分子ではなく、...
未分類

胡蝶蘭の根

先日に胡蝶蘭の根を初めて見ましたが・・・、衝撃をうけました。なんとクモランと同じく緑色なんですね。 調べてみると胡蝶蘭も着生植物だそうです。クモランの性質を考えると、やっぱり光合成をしているのでしょう。そのうちにクモランを研究している佐藤潤...
Ph.Dコラム

アイデアの源泉3:実際に観察する

多くの人が最初にwebでアイデアを探すと思いますが、ネット上の情報というのは、それを掲載した人によって取捨選択が行われた後のものです。その人が重要だと思わなかったり、気が付かなかったことは省かれてしまいますよね。そして、残った情報には新奇性...
未分類

クモラン

今年の生徒の研究テーマで、根で光合成する植物の研究を指導しています。先日に佐賀大学の辻田有紀先生の研究室のご協力で、静岡県にクモランの採取に行ってきました。この植物はランの一種で、 葉が無い 根で光合成する CAM植物 着生植物 という突っ...
Ph.Dコラム

アイデアの源泉2:本質を見抜く訓練

出会いが偏っているのかもしれませんが、「社会の役に立つ研究をしたい人」よりも、「好奇心で研究する人」の方が論理的で鋭い人が多いと私は感じます。義務感よりも好奇心の方が原動力として強いと思いますし、深く考える習慣も身につきやすいでしょう。私に...
Ph.Dコラム

アイデアの源泉1:異端の重要性

一般に認知されているような多くの課題・社会問題は、多くの優秀な人達が既に取り組んでいます。それでも解決できないモノに、次の世代の人達が挑戦します。先人達と全く同じような教育を受けて、同じようなアプローチで解決するとすれば、過去の先人達の才能...
Ph.Dコラム

くまさんの輝き

今朝のNHKのニュースで、熊本県農業試験センターで開発された新しい米の品種「くまさんの輝き」が紹介されていました。この品種は高温でも品質の高い米が獲れるというのがウリで、九州などでの栽培に向いているとのことです。 この「くまさんの輝き」は、...
Ph.Dコラム

ノーベル賞

今年のノーベル医学生理学賞に京都大学の本庶佑博士が選ばれました。毎年のように受賞する期待が高かった方です。ご研究内容の方は、私にとっては専門外なこともあって詳しくはないですが、近年の高額だが効き目の高いオプジーボ(ニボルマブ)の開発につなが...
生徒達の研究

バロニア

Valonia 「細胞が割れても生存できる~巨大単細胞生物オオバロニアの生存するための工夫~」 岡部菜々子さん 第58回日本植物生理学会年会高校生生物研究発表会 最優秀賞受賞 JSEC2017 花王特別奨励賞 古代中国の孫子の格言に、「凡将...
Ph.Dコラム

戦略の重要性

私は「戦略」という考え方を非常に重視しています。没落した企業、滅亡した国や傾いている国、失敗したプロジェクトなどは、もちろん要因は色々あって中には仕方無いと言えるものもあるでしょうが、大部分が「それはそうだろう」というものではないでしょうか...
自己紹介

自己紹介

当サイトの運営者 なかがわ ともみ 中川 知己 これまで植物と微生物の相利共生について、約20年に渡って専門研究を行ってきました。また7年前から主に横浜市を中心に、高校生の研究指導も行っています。高校生の研究指導に関しては、「新奇性」と「考...
Ph.Dコラム

地震予知の不思議

子供の頃に、「30年以内に関東大震災が来る確率は80%以上」と聞いた記憶があります。30年以上経ちますが、もちろん発生していません。最近は南海トラフ地震の確率が上がったという報道も見ましたが、不思議なのは誰も「今まで予知が的中した確率」を気...
生徒達の研究

エアープランツ

Tillandsia 葉が水を弾かない植物チランジア ~水は吸収されているのか~ 中島玲菜さん 第58回日本植物生理学会年会高校生生物研究発表会 優秀賞  第80回日本植物学会高校生研究ポスター発表会 学会長特別賞 「エアープランツ」として...