自分の研究紹介 私の研究テーマについてご紹介させていただきます。 年代別に・・・ 1. ダイズ根粒特異的に発現するPEPCの分子進化 2. 宿主植物が共生菌を安全に受け入れるための工夫 3. 共生菌を誠実に働かせるメカニズム
自分の研究紹介 はじめに・・・ 陸上植物の大部分は、アーバスキュラー菌根菌(AM菌)と呼ばれるカビと共生しています。このカビの菌糸は土壌に広がっており、そこからリン酸などの無機養分を回収します。菌糸の一部は植物の根に受け入れられて、一部の植物細胞内に形成した樹枝状体(ar... 2018.05.22 自分の研究紹介
防御と共生の進化 防御と共生の進化 1 2011年にシロイヌナズナのAtCERK1とミヤコグサのNFR1の比較で、共生応答の誘導に重要なYAQ配列を同定しました (植物の敵と味方 〜承〜)。しかしマメ科植物の根粒菌共生に関わると思われたこの配列は、実はAM菌共生する大部分の植物の... 2018.11.30 防御と共生の進化
防御と共生の進化 防御と共生の進化 2 〜コケ研究の利点1〜 ちなみに私は無知で不勉強だったので、フタバネを始める前は「植物は大きく分けて単子葉植物と双子葉植物に分かれる」などと思っていました。 だから双子葉植物のモデルであるシロイヌナズナと、単子葉植物のモデル(?)であるイネの研究基盤が整備されてい... 2018.12.02 防御と共生の進化
防御と共生の進化 防御と共生の進化 3 〜コケ研究の利点2〜 ヒメツリガネゴケの研究は90年代には開始されており、早くからモデルコケ植物としての確固たる地位を築いていました。もちろんコケ植物の進化的な重要性もありますが、最近まで不可能だった遺伝子を狙い撃ちで破壊するジーンターゲッティングが可能だったこ... 2018.12.04 防御と共生の進化
防御と共生の進化 防御と共生の進化 4 さて、フタバネゼニゴケ(Marchantia paleacea subsp. diptera)の話に戻ります。近縁のゼニゴケ(Marchantia polymorpha)は大量の胞子を作るので、それを使って低頻度でしか起こらないジーンターゲ... 2018.12.10 防御と共生の進化
防御と共生の進化 防御と共生の進化 5 フタバネゼニゴケは、期待したとおりAM菌共生とキチン防御応答の能力を備えていました。それではCERK1を持っているのでしょうか? 当然ながら誰もゲノム配列を調べたことが無い生物なので、自分で明らかにするしかありません。そこで東京農工大学にお... 2018.12.13 防御と共生の進化
防御と共生の進化 防御と共生の進化 6 フタバネゼニゴケは1コピーのCERK1遺伝子を保持していました。マメ科植物の研究で見つけた共生応答の起動に重要なYAQ/YAR配列(植物の敵と味方 〜承〜、〜転〜 3)の有無を調べてみると、このフタバネゼニゴケのMpaCERK1に見事に保存... 2018.12.29 防御と共生の進化
自分の研究紹介 大学院研究の概要 根粒菌共生はマメ科植物でのみ成立しますが、その理由としては 非マメ科植物に共生に必須の遺伝子がそもそも存在しない 遺伝子は持っていても、根粒で発現させることができない という2つのパターンが考えられます。私達は2のパターンについて研究を行い... 2018.06.06 自分の研究紹介
防御と共生の進化 防御と共生の進化 7 end フタバネゼニゴケに胞子を形成させることができません。そして胞子が無いと、フタバネゼニゴケが持っているCERK1を破壊することができません。このプロジェクトのゴールが「コケのCERK1に防御と共生の二重機能が保持されているか?」なので、CER... 2019.02.04 防御と共生の進化
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜序〜 1 根粒菌共生の概要での解説しましたが、根粒菌が共生するマメ科植物は窒素栄養の乏しい土壌でも旺盛に生育できます。また陸上植物の大部分が共生するアーバスキュラー菌根菌(AM菌)は、土壌中からリン酸などの無機養分を集めて宿主に供給します。したがって... 2018.11.05 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜序〜 2 そもそも植物はどのように病原菌を排除しているのでしょうか? 植物というと病気に弱いイメージをお持ちの方が多いと思いますが、実は病気を起こせる微生物というのは相当なエリートです。ある植物に対しては病気を起こせる微生物も、違う種や品種には感染で... 2018.11.06 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜序〜 3 基礎的防御応答は、植物細胞の表面でセンサーの役割を果たしている受容体によって起動されます。この中でもっとも有名なのが、細菌の鞭毛を感知するFLS2と呼ばれる受容体だと思います。 鞭毛は泳ぐための装置なのですが、FLS2はフラジェリンと呼ばれ... 2018.11.07 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜序〜 4 植物のLysM型受容体キナーゼは、2003年に同定されたマメ科植物のNFR1が最初だと思います。NFR1の果たす役割は絶大で、ミヤコグサのnfr1変異体はパートナーの根粒菌に対してほとんど応答しなくなってしまい、根粒菌は全く受け入れられませ... 2018.11.08 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜起〜1 みなさんは、自分が運の良い方だと思いますか? 私はその点は全く自信がありません。 ボスや渋谷先生から提示されたのは、「ミヤコグサのNFR1以外のLysM型受容体をRNAiで発現抑制して共生への影響を調べる」でしたが、これはRNAiで変化が観... 2018.11.13 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜起〜2 Nodファクター受容体であるNFR1は、キチンを受容して防御応答を発動させるCERK1と非常によく似ています。その上で私の研究により、NFR1には防御応答を起動する能力があることが判明しました。 NFR1もCERK1も、細胞外でそれぞれNo... 2018.11.13 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜承〜 NFR1とAtCERK1のキナーゼは、アミノ酸配列が類似していますが、NFR1だけに共生応答を起動する能力がありました。 ということは、NFR1の共生能力はAtCERK1とのわずかな違いで決まっているはずです。そこでNFR1の配列を部分的に... 2018.11.15 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜転〜 1 シロイヌナズナは研究が圧倒的に進んでいる植物で、ここで発見された知見が多くの植物でも利用されます。シロイヌナズナの知見は、植物全体を代表するという考え方が当時は主流でした(今でもその傾向は強いと思いますし、実際に他の植物研究に対する貢献度は... 2018.11.16 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜転〜 2 アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は糸状菌(カビ)で、菌糸の一端は根に感染して、植物細胞の中に樹枝状体という構造を作ります。菌糸の大部分は根の外側の土壌中に広がっており、土壌中からリン酸などの無機養分を集めて、それを樹枝状体で植物に渡して、そ... 2018.11.26 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜転〜 3 CERK1がAM菌共生に関わっている可能性が浮かび上がって来ました。これを確認するためには、CERK1が壊れた植物でAM菌共生を調べるのが王道です。シロイヌナズナではCERK1が壊れた変異体を渋谷先生達が単離していたのですが、残念ながらナズ... 2018.11.27 植物の敵と味方
植物の敵と味方 植物の敵と味方 〜結〜 植物の基礎的防御応答を制御することが知られているOsCERK1が、正反対の共生菌を受け入れる機能も担っていることを私達は明確に証明しました。類似した報告は、少なくとも植物業界では全く存在しません。しかもイネ以外の多くの植物でも同様の仕組みに... 2018.11.27 植物の敵と味方